
森友vol.18 株式会社迫田興産(鹿児島県)_2026年11月発刊
株式会社橋本林業の所在する田辺市は和歌山県の南西部、ユネスコの世界遺産「熊野古道」の起点となる都市として知られている。同社の橋本歩 代表取締役は、高校卒業後、15年間林業会社で現場作業員として経験を積み、高度な伐採技術や現場管理のノウハウを習得し、もっと自由な環境で、自分の力を試したいという思いを持って独立を決意された。
2016年7月の創業以来、今年でちょうど10年目の節目の年を迎えている。橋本社長に、この10年を振り返っていただくとともに将来への展望などをお話しいただいた。
「和歌山の森林は平均の傾斜が30度と急峻な地形が多く、重機だけでは対応できない現場も少なくありません。河川沿いや急斜面では他府県ではあまり使われなくなった集材機を使っての架線集材の技術が求められ、作業者一人ひとりの技術が安全性や生産性を大きく左右します。また、世界遺産の熊野古道周辺では環境への配慮を最優先とし、規制区域への立ち入りを避けながら地域の自然環境を守る姿勢を徹底しています。創業当初はチェーンソー1台からのスタートでした。補助金制度を活用しながら設備投資を進め、創業したばかりでまだ信頼のない時期に高性能林業機械を導入できたのは販売店のキナンさんが頑張ってくれたおかげだと思っています。また、新宮機販さんのサポートもあり毎年1台ペースで導入し、現在では9台の林業機械と5台の車両を保有しています。社員は、14名で平均年齢は38歳と若い世代が中心です。

事業内容は、伐採から素材生産までを一貫して担う体制を構築しました。市場の需要に応じて伐採量を調整しながら、住宅用木材だけでなく発電用バイオマス燃料の供給にも対応しており、そのために専任の作業班を組んでいます。公共事業と民間事業を組み合わせることで安定した経営基盤を築く努力をし、同時に森林資源の有効活用も考慮して事業展開を考えています。その一方で弊社が最も力を注いでいるのが安全対策です。5年前に発生した重大事故がその原点です。
当時は少人数で事業を運営しており、安全管理が十分とは言えませんでした。『二度と同じ事故を起こしてはいけない』その強い決意から、安全管理のあり方を抜本的に見直しました。全社員が毎日『ヒヤリハット』や『危険予知(KY)』を記録するように取り組み現在もそのシステムを継続しています。危険を感じた場面や、その日の作業で注意すべき点を文章として残し、安全意識を日常的に高める仕組みです。当初は面倒だという声もあったが、粘り強く説明し継続したことで、今では社員にとって当たり前の習慣として定着しました。さらに、事務社員からの提案をきっかけに、膨大な『ヒヤリハット』記録をAIが集計・ 分析し、社員一人ひとりの危険傾向や注意すべきポイントをレポートして可視化することができました。他人から注意されると反発してしまうこともあるが、AIが客観的に示す結果は素直に受け入れやすいので効果が高いと言えます。分析結果は安全会議でも共有し、自分自身の弱点を客観視し、事故防止へつなげる重要な教材となっています。こうした取り組みの成果なのか、ここ3~4 年は 大きな労働災害は発生していません。
社員には班長がマンツーマンで危険箇所や作業手順を指導するようにしています。毎朝の現場ミーティングでは、その日の作業内容と危険要因を全員で確認し、安全を最優先にした現場経営を徹底しています。林業は危険な仕事だからこそ、安全への取り組みに終わりはありません。
地域との信頼関係も大切にしています。山林所有者や森林組合との連携は常に心がけており、森林整備による水質保全など、環境への配慮も欠かすことはできません。森林を守ることは地域の暮らしを守ることにつながり、持続可能な森林経営を可能にすると考えます。
今後は、先進的な林業機械やデジタル技術を積極的に取り入れながら、生産性と安全性のさらなる向上を目指すつもりです。また、熊野や和歌山産木材のブランド価値向上や、林業の魅力発信にも力を入れ、担い手不足が課題となる業界全体にも貢献したいと考えています。良い取り組みは自社だけで終わらせるのではなく、業界全体で共有したいですね。現場で磨いた技術、安全への不断の挑戦、そして新たな技術への柔軟な姿勢、その積み重ねが、和歌山の林業の未来を支える力を生み出すと信じています。」

引用: 森友vol.18(2026年11月発刊)

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