入社研修で先輩から「機械には魂がある。だから、いきなり壊れることはない」といわれたことを、今も大切にしています。機械が壊れるときは、必ず予兆があるということ。だから、どこかの現場へ出かけたとき、時間があれば、近くのお客様を訪ねて機械の調子を聞いたり、音など気になることがあれば、少し機械を見せてもらったりしています。それで故障の予兆を発見できれば、大事になる前に対応できるので、未然に機械が止まることを防げるからです。
お客様は建機を仕事に使っているので、迅速な修理対応によって停止している時間を少しでも短くするのが、私たちサービスの大切な仕事の一つです。そのためには、幅広い知識や経験則を駆使して、故障が発生してから対応するだけでなく、重大な故障を未然に防ぐこともお客様のためには重要なことだと思っています。それに、機械のことを気にかけて、お客様のところにちょくちょく顔を出していると、「うちのためによくやってくれている」と信頼してくれるようになり、良好な関係を築くことも。やはり、お客様の役に立てている、必要とされているという手応えを得られるほうが、仕事にもハリが出て楽しいです。
私は、この仕事が天職だと感じています。自動車整備の専門学校を卒業するとき、自動車ではなく、建機の整備を選んで本当によかったな、と。住友建機販売では、サービスの業務範囲が広く、修理対応や点検などはもちろん、見積り作成や価格交渉も任せてもらえます。整備の仕事というと、お客様から依頼されて発生する受け身の仕事というイメージですが、当社なら自分次第でサービスが仕事を獲得してくることもできるのです。
例えば、お客様のところに顔を出して点検しているときに不具合を見つければ、修理したほうがいいですとお客様に提案することができます。そうして仕事化できれば、案件の獲得から修理、試運転、お客様への引き渡しまですべてに携わることに。自分で見積もりをつくるので、利益がどのくらい出るのかもわかっているから、自分の仕事が会社にどの程度貢献できているのかを目で見ることもできます。サービスの業務は、機械を直したり、カスタマイズすることでお客様の役に立てていることは実感しやすいのですが、会社に貢献できているかは見えにくいところがあります。でも、住友建機販売であれば、それも実感できます。
こういった一つひとつが楽しくて、ストレスもゼロです。仕事を誰よりも楽しめている自信があります。
ある日、お客様から「(ショベルを始動する)キーをオンにするとエラーが出る」と連絡が入りました。すぐお客様の作業現場へ行って試してみると、確かにエラー表示が出て機械が動かなくなってしまいます。とても忙しいお客様で、機械が動かないと仕事になりません。「機械を持って帰れ!」と厳しい言葉もいただきました。それでも、部品を交換するなどして何とか動くように復帰したのですが、またエラーが出たと連絡が。その後、症状はおさまり問題なく動くようになったのですが、対処療法で根本原因が分からず解決できていなかったため、時間を見つけてはお客様のもとを訪ねて機械の状況を確認していました。
そんな様子を見て何かを感じてくれたのかもしれません。よくしてくれるようになり、私がサービススキルコンテスト(SSC)で世界一になったときは非常に喜んでくださり、プライベートでは食べたことのない、おいしい食事に連れて行ってもらいました。今では、「もし、松尾くんが他社へ行ったら、そこから(機械を)買うから」といってくださるまでに。住友建機販売という看板ではなく、松尾という人間を信頼してもらえていることがとても嬉しく、仕事の励みになっています。これも、お客様と密接にかかわる働き方ができるサービスの醍醐味の一つだと思います。
今後の目標について
入社して3カ月経った頃、SSCの存在を知りました。住友建機が海外展開していることもあり、国内だけでなく、世界大会もあるといいます。サービスの技術レベルを世界の人と競える――そんな機会があるなら、ぜひ挑戦したい。そのときからSSCに出場することが目標になりました。
出場できる機会が巡ってきたのは、入社5年目のとき。工場長から「その気があるなら推薦するぞ」といわれ、即座に出場したいと答えました。そこからは練習の日々でした。西日本の支店、営業所の代表で集まって合宿を行ったり、先輩方に協力していただいたり。ただ、大会半月前の合宿で実力差を見せつけられたこともあり、入賞できればいいという気持ちで本番にのぞんだのが良かったのかもしれません。
最初に出たトラブルシュートの課題は、私が苦手にしているものでしたが、偶然にも原因を突き止めることができて納得できる結果を得ることができました。それ以降は日頃やってきたことを発揮することに集中して、国内大会で1位という最高の結果をつかむことに。その後行われた世界大会でも1位を取ることができたのですが、あらためて、サービスの仕事においては奇跡というものはないのだと再確認できた気がしています。日ごろから積み重ねてきたことしか、できないのだと。サービスとしてスキルを高めていくには、日ごろから意識して業務に取り組むことと、経験の幅を広げていくことしかない――入社後数年経って、気持ちに緩みが出てくるタイミングで、このことを再確認できたことは有意義だったと思っています。
私が就職先として住友建機販売を選んだ理由の一つに、土日休めることがあります。ディーラーの場合、土日はお客様がたくさんくるため休むことは難しいと先輩に聞いていたため、将来子供ができたとき、休日を一緒に過ごすことを考え、ディーラーを候補から外したという経緯があります。実際、子供が生まれてから、土日に家族と過ごせていることに満足しています。
また、育成制度がしっかりしているところも安心できます。トレーニングセンターで学んだ知識を実作業を通じて復習できるし、修理で困ったことがあれば、先輩方に聞くことができます。SSCに参加するには、1週間ほど営業所に顔を出すことができなくなるのですが、周りの人たちが協力して穴を埋める算段をつけてくれ、全力で応援してくれました。そういう温かさのある会社だと思います。
福岡支店北九州営業所
八谷工場長
松尾くんは、今どきの若者にしてはやる気がありますね。入社2年目のときから見積もりをつくることにも積極的で、お客様のところをどんどん回って修理を取ってくるようになっていました。SSCで優勝したことによって、社内外に名前を知られるようになっただろうし、頼られることも増えていくでしょう。そのことに甘えず、これまでどおり自分の力を伸ばしていこうと取り組めれば、いずれは工場長も超えて、サービス全体を見るような立場まで行くかもしれません。まあ、私個人としては、いつまでも私をサポートしてくれると嬉しいですけどね。注文があるとすれば、作業場をもっときれいに保つよう心掛けてほしい。身の回りの整理整頓をきちんとすることは、サービスの質にも通ずると考えているので。
有限会社木下金属 常務取締役
木下 様
松尾くんは、本当に現場ファーストなんです。うちの機械が壊れたときも、迅速、丁寧に対応してくれます。機械が動かないと生産性が下がってしまうことをきちんと理解しているからこそ、お客様を大切にできるのだと思います。修理の依頼もないのに、しばしば現場まで足を運ぶのは大変なはずです。彼も他に仕事を抱えているわけだし、時間をつくってきてくれるのだから。それでも、顔を見せてくれる気持ちがいいですよね。元気もいいし、若者らしい活気もある。だから、応援したくなるんです。